第四章【試演】〜June, 2001〜
6月の初旬、真夏かと思うようなうだるような暑さ、30度を超えたこの日、初めての試演に出かけた。
場所は東京・渋谷、音響が素晴らしく録音にも使われる、そして僕もThe Dynamitesの録音や、その他レコーディングの仕事等で間接的にお世話になっている、某会社の某リハーサル室にて行われた。
今回初めて競演する女流ピアニスト、仮に花子さんとしよう(花子さんなんて勝手につけてごめん!)。
事前に手紙やメールでのやりとりはあったが、まさに今日が初対面。
この瞬間から、二人の競演によってどんな音になっていくのかという期待が高まる感覚の始まりなのである。
リハーサル開始...。
今回はデモ録音ということで全5曲用意してある。
詳しくは又お話ししますが、今回のために書き下ろしたオリジナル曲が2曲、既存の曲が3曲という割合になっていて、
1曲を除きあるテーマを持って選曲及び作曲されたものである。
まずは1曲目、これはGotsuがいつも定番としているヴァイオリンらしい楽曲、僕のヴァイオリンを聞いたことがあるならおそらく一度は耳にしたことがある曲であろう。
ピアノとの2重奏という形で演奏するのは久しぶりなので、今回はピアノパートにも多少手を加えた。
今まで以上に面白いアレンジになっているので、是非CDになった暁には楽しみにしていて欲しい。
リハーサルは順調に進み、花子さんの絶妙なサポートぶり、又必要なポイントでは必要十分なアピールも感じる。
おまけにこの曲はGotsuの勝手なプレイぶりに周りがいつも迷惑する曲、
しかしながらそれをいとも簡単にサポートする花子さんのプレイに、
Gotsuはピアノとの競演において久々の感動を覚える。
2曲目、オリジナル曲第一弾の登場、詳しくは書けないがロマンチックかつ素朴なメロディを、ゆるやかなグルーブ感で表現する、
Gotsuにはちょっと珍しいアカデミックな曲。
それゆえに表現能力を問われるのだが、一緒に演奏するのが初めてとは思えないような競演ぶりに納得。
3曲目は既存の曲。Gotsuの仕事の範疇で、たまに出会うジャンルの音楽である。
この音楽スタイルはヴァイオリンが主役ではないものの、重要で欠かせない役割を担っている。
おまけに今回取り上げた作曲家は、今ではクラシック専門のプレイヤーにも数多く取り上げられている。
それを今回用にリニューアルアレンジ、そして非常に高度なテクニックを要求されるアレンジに仕上がっている。
ここでは両者のアピール合戦が繰り広げられた。
4曲目は今日仕上がったばかりのGotsuのオリジナル曲第二弾。
今までの曲とは違い非常にポピュラー的そしてリズムをアピールする楽曲に仕上がっている。
花子さんは初見にもかかわらず果敢にこの曲に挑む。
本人はこういうスタイルの音楽には慣れていないらしいが、「楽しい楽しい」と言って弾けば弾くほど上達していく様子を見て、
さすがのGotsuも脱帽。
5曲目はクラシックの既存の曲。
この曲も長い間何度も弾いたことがあり、ただしピアノとの競演という形は小子供の頃の発表会以来、
いや発表会でも弾いたことがないかも知れない。
これは一発でそつなくこなし無事終了。
暑い日に熱いリハーサルが繰り広げ、帰る頃ようやく涼しさを感じられるようになった風が、とても心地よかった。
1週間後の録音当日がとても楽しみである。